変わる?学校から仕事への第一歩(第12回 スクール・トゥ・ワーク)


一般社団法人スクール・トゥ・ワークの設立を記念して、当団体の活動の目的と背景を知ってもらうために、当団体の代表理事の古屋さん、監事の小松さんと事務局スタッフで非大卒人材の奥間さんと、座談会形式で、「変わる?学校から仕事への第一歩」の連載をお送りしています。

前回 変わる?学校から仕事への第一歩(第11回 初任給の格差)

小松:
全12回にわたり「変わる?学校から仕事への第一歩」をお送りしてきましたが、読者の皆さんはお楽しみいただけたでしょうか?最終回ですので、緩い座談会をさらに緩くして、お届けしましょうか(笑)。まずはお二人に座談会の感想をお伺いしましょうか?

奥間:
僕は非大卒人材の当事者として座談会に参加させてもらいましたが、普段なかなか振り返ることがなかった学生時代や上京したてのときを振り返ることでき、また、専門家である古屋さんの意見や実際のデータを使って色んな角度から非大卒の課題を考えることができとても充実したものになったと思います。

古屋:
非大卒、中でも高卒就職の分野について、これだけまとまった議論を、当事者を交えて行ったことは間違いなく日本史上初でしょう。教育の分野は、たとえ就職活動のような外部との関わりのある話であっても、当事者不在になりやすい傾向があります。その一点でとても楽しくお話させていただきました。ありがとうございました!

小松:
そうですね。私もとても楽しかったです。お二人のお話もそれぞれ面白かったのですが、何と言っても、日常生活では見えていない話が満載だったように思います。

大卒と非大卒というコミュニティの「分断」

小松:
アメリカがトランプ大統領になってから「分断」という言葉がやたら使われるようになった気がしますが、日本社会においても、大卒と非大卒には「分断」があるように思いますね。今回の座談会でいろいろなことをテーマに話をしてきましたが、この大卒と非大卒の「分断」という点は、お二人はどのように感じていますか?

古屋:
この前、英国在住の友人と話をした際に、「EU離脱について、”こいつは何派”なんだ、と会話で探り合う雰囲気がある」と聞きました。隣人、同僚、友人知人。何派だから、という理由で会話ができなくなってしまうというのが最も恐れるべき「分断」です。その分断はEU離脱後も治りがたい古傷として英国を苦しめることでしょう。コミュニティ同士が対立することで、イノベーションも健全な競争も生まれず社会は活力を急激に失ってしまいます。 幸運なことに日本社会は世界でも珍しいほど、安定した社会を継続できています。新時代を迎える日本社会を分断するとすれば、「学歴」や「地方と都市部」といった現状すでに露呈しつつある要素です。学校-職業移行に良い変化を与えることで、少しでも分断された世界が交じり合うようにしていきたいですね。

小松:
そうですね。日本は世界と比べると「分断」は極めて小さいように思います。とはいえ、今回の座談会を通じてみて、こんなにも非大卒人材について知らなかったのかと驚かされるばかりか、自分の判断基準は自分の属するコミュニティに引っ張られるなと思いました。古屋さんのおっしゃるとおりで、スクール・トゥ・ワークの活動を通じて、分断を回避できるようにしたいですね。非大卒人材でもある奥間さんはいかがでしょうか?

奥間:
正直なところ、僕はこれまではあまり学歴や環境による「分断」を意識したことがありませんでした。しかし、今回の座談会を通じて、自分の過去を振り返ったり統計データを見たりしたことで、「分断」されていたからこそそれに気づかず、気づかないからこそ分断の溝は深まっているのかなと感じました。

小松:
おっしゃるとおりで、気づかない、知らないということは「分断」は進んでいるのかもしれませんね。そういった意味では、この対談は貴重な情報ソースになるかもしれません。このシリーズを通して、ほんの少しだとは思いますが、学校関係者、行政担当者、企業の人事担当者や学者の皆さんなどに、新しい切り口を提供できたのではないかと思います。

若者へのキャリア教育はどうあるべきか

小松:
これらの現状を踏まえて、当団体の主な活動である若者へのキャリア教育はどうあるべきだと思いますか?

古屋:
私たちの最終目標は「18歳の進路選択をもっと面白くする」ことだと思っています。今の日本の大人は高校生大して偏差値ピラミッドを登るルートしか示すことができていません。しかし、これだけ産業構造がめまぐるしく変化する時代、このルートを登ることの価値が大きく低下していることは明らかです。私たちは高校生の段階で、身近なものごとから自分のしごと人生を考えてもらうことで、キャリアの最初の第一歩を踏み出すタイミングを早めようと思っています。このタイミングが早ければ、今、登っているルートについて早く修正するチャンスがあり、失敗もできる。日本人は一度きりの人生を、もっと楽しくエキサイティングにできる、そのための早期選択を促すようなキャリア教育を行っていきたいですね。

小松:
「18歳の進路選択をもっと面白くする」!ワクワクしますね(笑)。

奥間:
そうですね。僕自身、少し前までは高校生として進路選択を迫られる立場でしたが、卒業が近くなって慌てて自分の進路を探し始めたけど、進学や就職に関する情報を全然持っていなくて、とりあえず先生や親に進められた企業に就職した後すぐに離職をしていく知人を何人も見ました。それこそ一度きりの人生なのにすごくもったいないなと思います。古屋さんがおっしゃる「18歳の進路選択をもっと面白くする」ためにも、スクール・トゥ・ワークのキャリア教育は、一方通行で自己満足なだけの授業を行うのではなく、僕たち非大卒人材の当事者が講師として話し、一緒に考えることで早い段階で学生達のキャリアを意識するキッカケづくりの場であるべきだと考えています。

小松:
当事者ならではのコメント。ありがとうございます。座談会でお送りしてきた非大卒、特に高校就職の問題ですが、時代の流れによる制度疲労が主な原因だと思います。時代の流れが本当に早くなってると思います。そのため、日本全体、いやもしかしたら世界全体でも似たような制度疲労が頻発しているように思います。そんな時代の中では「昔から続いているから」という理由だけでは不十分で、未来のほうを向いて、自分たちの頭で考えることが求められていますね。さて、長々とお送りしてきた座談会ですが、最後に、スクール・トゥ・ワークの代表理事である古屋さんにまとめていただきましょうかね。お願いします。

古屋:
お二人ともありがとうございました!こんな話があります。2000年に日本人が「日本はもう成長できない」と愚痴ると、外国人から「まだ日本はカードを一枚残しているじゃないか。”女性”というカードを」と言われました。2010年に日本人が愚痴ると、まわりから「シニアというカードを切っていないよ」と言われました。日本の就業社会は、まだもちろん課題は多いものの、この20年で女性・シニアという二大カードを切り、就業率が大幅に上昇しています。そしてこの4月からは”第三のカード”、外国人受け入れの大幅拡大も始まりましたね。このように、これまで女性・シニア・外国人という切り札をどんどん切ってきた日本社会ですが、最後のカードが非大卒、特に年間20万人弱の高卒の就業者ではないかと思うのです。灯台下暗しで、私は日本の若者こそが日本の就業社会の「最後の埋蔵金」になりえると思っています。そして、今のキャリアづくりは全然当たり前ではありません。今の常識は未来の非常識、私たちはもっと面白い社会を作れるはずです。一緒に取り組んでまいりましょう!ありがとうございました!

 

「変わる?学校から仕事への第一歩」連載シリーズ

第1回 はじめに
第2回 大卒人材と非大卒人材の分断 前編
    大卒人材と非大卒人材の分断 後編
第3回 高校生の就職制度
第4回 高卒の就職率
第5回 「七・五・三」現象
第6回 離職した若者はどこへ行くのか
第7回 現在のキャリア教育
第8回 ハローワークの役割
第9回 地域格差
第10回 就職先企業の規模
第11回 初任給の格差
第12回 スクール・トゥ・ワーク


一般社団法人 スクール・トゥ・ワーク
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一般社団法人スクール・トゥ・ワーク(代表者:代表理事 古屋星斗)
学生及び非大卒人材に対するキャリア教育事業等を展開しています。キャリアを選択する力の育成を通じて、未来を生きる若者全てが安心・納得して働き、その意欲や能力を十分に発揮できる社会の実現を目指しています。

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