シンギュラリティ(技術特異点)シリーズ 第3回:シンギュラリティ概念に対する支持


今回は、第2回で紹介したヴァーナー・ヴィンジの論考後に登場した、「シンギュラリティ概念」の強力な支持者ならびに興味深い取り組みをご紹介します。

 米国の発明家・未来学者レイ・カーツワイルは、2005年に「The Singularity Is Near:When Humans Transcend Biology(シンギュラリティは近いー人類が生命を超越するとき)」を発表し、それまで限られた研究者などの間で論じられていた「シンギュラリティ(技術的特異点)」概念を広く一般に知らしめることに大きく貢献しました。1999年に発表した「The Age of Spiritual Machines(邦題:スピリチュアル・マシンーコンピュータに魂が宿るとき)」では、「シンギュラリティ」発現主要素の1つであり指数関数曲線を描いて進展する「技術加速」により、コンピュータが人間の能力に匹敵するようになる可能性を論じましたが、本書では、指数関数的発展は技術革新だけでなく宇宙進化の過程にも見られ、進化とは増加秩序のパターン創生のプロセスであり、加速する発展は普遍的な原理であると論じました。これを、宇宙進化における主要なパラダイムシフトをプロットして示し、宇宙進化が大きく6つのエポック<1.物理化学的進化(原子構造)、2.生物的進化(DNA)、3.脳の進化(神経パターン)、4.技術の進化(ハードウエア・ソフトウェア)、5.技術と人類技術の融合(生命秩序と人類技術の融合)、6.宇宙の覚醒(宇宙が知的プロセスと知能で飽和する)>に分けられ、現在はエポック4であり、シンギュラリティは次のステップ5で開始し、人間と機械が融合することで人類は非生物的になっていき、生物的な限界を超越して創造力を増強できる、これがシンギュラリティのエッセンスであると主張、さらにシンギュラリティ発現時期は2045年であると予測しました。下記に本書掲載「シンギュラリティへのカウントダウン」図に宇宙進化の6エポックを筆者が追記した図を示します。

<図:シンギュラリティへのカウントダウンと6つのエポック(参考:The Singularity Is Nearウェブサイト)>

カーツワイルは、2009年に米国シリコンバレーに設立した「シンギュラリティ・ユニバーシティ 」(日本人工知能学会サイトに、2014年4月に参加したシンギュラリティ・ユニバーシティへの筆者のプログラム参加報告が公開されていますので、関心がある方はご参照ください。)という教育機関を通じて、人工知能(AI)を含む様々な革新技術を組み合わせて新たなソリューションを研究開発・提供するスタートアップを強力に支援しています。これは、彼が「シンギュラリティ」の単なる支持者というより積極的かつ熱烈な推進者であることを示し、自らシンギュラリティを起こそうとする取り組みの一環であると私は考えます。

 2011年には、ロシアの起業家ディミトリ・イツコフが「2045 Initiative」という取り組みを立ち上げ、人類を段階的にアバター化するプロジェクトを提唱しています。このプロジェクトには(驚くことに?!)ダライ・ラマが支援しているという記事がホームページに掲載され、さらに2013年ニューヨークで開催されたシンポジウム「Global Future 2045」ではヒンズー教、チベット仏教、東方教会(ギリシャ正教)の宗教指導者もスピーカーとして名を連ねました。

英国オクスフォード大学Future Of Humanity Institute(人類の未来)研究所長のスウェーデン人哲学者ニック・ボストロムは、「How long before superintelligence(超知能まであとどの位か)(1997年~2008年)」で「超知能」を「最優秀な人間の脳より、科学的創造力、汎用的な知恵、社会的スキルを含む、あらゆる面で実践的にはるかに勝っている知性」と定義しました。これは超「汎用知能(Artificial General Intelligence: AGI)」を意味すると考えられます。汎用人工知能とは「人間のように十分に広範な適用範囲と強力な汎化能力を持つ人工知能(出典:汎用人工知能研究会)」のことで、その逆は「狭い人工知能」あるいは「特化型人工知能」で、現在存在する人工知能は全て後者です。2014年には「Superintelligence: Paths, Dangers, Strategies(超知能:道程、危険性、戦略)」を発表し、いったん人間レベルの汎用人工知能が登場すると、その結果かなり早急に、もしかしたら即時的にそのAIの認知能力はあらゆる面で人間を超越しするかもしれず、そうなるとその超知能の制御は困難になり、人類存続の危機が発生する可能性があると論じました。そして最終章「試練の時」では「知能爆発の可能性を目前にして、人類は爆弾を手にした子供である。最良の施策は、爆弾をそっと置いて、そこから逃げて大人に相談することだが、爆発したらどうなるかを知りたい愚かな輩が爆弾のスイッチを押すかもしれないし、そもそも大人がいない。(中略)我々はこの状況に対して人類の全見識を結集する必要がある」と訴えかけました。


佐々木健美
佐々木健美

情報セキュリティ・個人情報保護コンサルタント
慶応義塾大学文学部卒業(社会学専攻)、主にヨーロッパにてマクロビオティック料理を研究、帰国後翻訳・IT管理業務等を経て、現在情報セキュリティ・個人情報保護コンサルティング・翻訳・教育業務に従事。2014年4月米国シンギュラリティ・ユニバーシティにてエグゼクティブプログラムを受講

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