<インタビュー記事>新しいものづくりがつくる産業の未来・第3回「FashionTech」


連載「新しいものづくりがつくる産業の未来」、第3回目となる今回は、ファッションとテクノロジーを融合したFashionTech(ファッションテック)がテーマです。

Etw.Vonnegue(エトヴァス・ボネゲ)を率いるファッションデザイナーであり、デジタルハリウッド大学院の助教であるOIga(オルガ)さんにお話を伺いました。

デジタルツールを活用した新しいファッションを提案し続けるOlgaさんは、FashionTech領域のトップを走る先駆者でもあります。テクノロジーを活用するからこそできる表現、今後の新しいファッションの可能性を大いに感じる取材となりました。

Etw.Vonneguet
http://www.etw-vngt.com/

川島
本日はよろしくお願いします。
まずはじめに、Olgaさんの現在のご活動について教えてください。

OIga
2017年4月よりデジタルハリウッド大学の助教に就任し、ファッション論の講義を行っています。また、今年度から「ファッションテックラボ」という研究室も担当します。ファッションに特化したデザインエンジニアリングの教育をメインとして、ファッション業界全体を盛り上げていきたいと考えています。

川島
クリエイターと教育者という2つの立場で活動されるということですね。

OIga
はい。この分野を学術的に成立させることも一つのチャレンジと考えています。

川島
そもそもFashionTechを研究しようと考えたきっかけはなんだったのでしょうか。

OIga
もともと服飾大学に通っていたのですが、ちょうどそのころに、テスト的にillustratorの授業が普及しはじめたのですが、ファッションの作り方、売り方、伝え方はやがてテクノロジーに代替されると思いました。テクノロジーがファッションデザインの世界に今後どんどん影響していくと思い、これをもっと専門的に勉強したいと思ったのがきっかけです。

川島
なるほど、そしてその後、ロンドンカレッジオブファッションに進学し、本格的にFashionTechの領域を学ばれていったんですよね。
これまで様々な作品を手がけられていますが、どういったところからインスピレーションを得て、製作されているのでしょうか。

OIga
最新のテクノロジーからインスピレーションを受けることは多いですね。ファッションは毎シーズン新しい技術やテーマを扱い、次のシーズンに持ち越す事はしないのですが、テクノロジーは常に積み重ねの上に新たなものが作られます。このようにファッションとテクノロジーは根本的な概念が違うため、水と油のように捉えられることもあるのですが、テクノロジーを取り入れることによって、ファッションだけでは見えてこなかった新たな発見が多くあり、アイデアのインスピレーションにも繋がっています。

川島
製作環境などにもテクノロジーの影響はありますか。

OIga
はい。ファッションデザインだけではなく、テクノロジーについて研究開発する時間が圧倒的に多いと感じています。また、デザインはMacを主に使用し、作品に合わせてツールを選びアウトプットしていますが、ファッションの現場というよりは普通のテクノロジーの現場にミシンなどのファッション工具があるような感覚ですね。

川島
次に、これまで制作されたご自身の作品に関して教えてください。

OIga
●着るセメダイン

布にセメダイン株式会社の導電性接着剤を使って回路を描き、LEDを約2000個搭載した光るドレスです。東京オリンピックも視野に入れたかったので、着物をモチーフとしています。

●HEATER PERKER


こちらも導電性接着剤を使用したもので、アイロンプリントできる電子回路を設計して、モバイルバッテリーを差し込むと温まる暖房機能のあるパーカーです。

●「_A_C_T_(アクト)」ぼくらのいいね!が見える服

株式会社DMMのオープンチャレンジで採択されて、富士通クラウドテクノロジーズ株式会社と共同開発したものです。肩を組む、ハイタッチするなどのアクションによって光るコミュニケーションウェアです。複数人のコミュニケーション行動をトリガーに、服の中に搭載した電子回路が接触し光ります。触れたところによって光り方が変化し、ライブや音楽イベント、フェスなどで周囲と触れ合うことをより加速させ場を盛り上げます。

この他に、渋谷パルコに出店した際にAR・VR体験イベントを開催しました。イギリスのプリンストン大学や文化ファッション大学院大学で、海外の学生に向けたファッションテックの講義なども行っています。

川島
見た目が美しいのはもちろん、コンセプトや機能性も洗練されていて、例えば「_A_C_T_(アクト)」 は、ファッションを通して自然で滑らかなコミュニケーションが実現していて、本当に素敵ですね。日々活動されていらっしゃる中で、将来的にご自身の作品やFashionTechという分野が日常にどのように浸透してほしいと考えていらっしゃいますか。

OIga
少し前にZOZOスーツも話題になりましたが、今年は機能性ファッションが人々にとって日常的なものになる、ブレイクスルーの年であると感じています。日常的に機能性ファッションを取り入れるようになり、常識化することで、業界が一気に盛り上がるのではないかと思っています。

課題としては、一過性のものとして終わらせず、機能性ファッションをいかに持続性のあるものとするかです。基本的なことですが、ターゲットを明確にして技術先行型の商品にならないようにしたいと考えています。

川島
具体的にご自身の作品と相性が良いと思う分野などはありますか。

OIga
単純な機能性ファッションという領域を超えて、「_A_C_T_(アクト)」のように、人々の気持ちが高揚する出来事を加速する未来のデバイスであって欲しいと考えています。
具体的には、エンターテイメントの中でファッションテックを使用して、人々が楽しいと思うものづくりができればと考えています。
また、「_A_C_T_(アクト)」のコンセプトを発表した際に、聴覚障害の方にも活用していただく事を考えて、今後は、ユニバーサルデザインにも繋げていければと考えています。

川島
まだこの世にない新しい表現方法や、ファッションだからこそ、Olgaさんだからこそ生み出すことができるデバイスがありそうですね。
最後に、今後の目標について教えてください。

OIga
テクノロジーは日々進化を続けています。そんな中で、FashionTechという分野はまだまだ未知の領域が多いです。
今後は、助教として担い手を育てつつ、テクノロジーを細分化してFashionTechを学術的分野として確立できたらと考えています。
将来的には、組織として職業として認められることも重要です。そのために、共同研究や産学連携も積極的に行いたいと考えていますので、デジタルハリウッド大学院でFashion tech lab設立にあたり、スポンサーも募集してます。一緒に未来を、世界をかっこよくしていきましょう!

川島
OIgaさん、本日は貴重なお話をありがとうございました。

OIga
ありがとうございました。

O l g a
ファッションテックデザイナー
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E t w . V o n n e g u e t
エトヴァス・ボネゲ 代表

デジタルハリウッド大学院 助教
ファッションテックラボ 主宰
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お問い合わせ先 WEB / www.etw-vngt.com
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川島京子
川島京子


1989年東京都生まれ。デジタルハリウッド大学院メディアサイエンス研究所リサーチアソシエイト。Creative Smash株式会社代表取締役。2008年、明治大学在学中に インターネット上の仮想世界「Second Life」にて音楽ユニットをプロデュースし、企業とタイアップしたバーチャルイベントを実施。メジャー音楽レーベルに勤務を経て、24歳で独立。国内最大級の3Dプリンタメディア等ものづくりやクリエイティブに関わる事業を展開。

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