フィンテック最前線・第1回 金融リテラシーの本質


仮想通貨の市場環境

フィンテックの代表格である仮想通貨の市場環境は、2018年の年初から、仮想通貨の下落、コインチェックのNEM流出事件、さらには、日本では未だ大きな話題となっていないが米ドルとペッグ(連動)しているとされている仮想通貨USTetherへの疑惑(2018年1月末時点で、約2,500億円の市場総額。仮想通貨としてトップ20に入る規模ながら、発行体は、米国政府ではなくUSTether Limitedという未上場かつ情報を公開していない私企業と、今世紀初頭のドットコムバブルを彷彿とさせるような混沌とした環境となっている。

現在、日本では、財務省・金融庁はじめ行政が厳格な対応をすることで、これらに何らかの規制を施し、消費者と国民の財産的自由権を守ろうとしている。

コインチェックのNEM流出事件では、公表段階で26万人分の資産が流出されたとされている。この取引所で資産を移動できず凍結されている人たちも含めるとより大きな数の方々の財産的自由権が侵害ないしは抑制されていることになる。

これにかかる行政コストは当然ながら無料ではなく、全国民から満遍なく徴収されている税金から少しずつ拠出され、法人・個人の別なく、行政を通じて納税者の数だけ、余分な支出を強いられていると解釈すれば、全ての人に経済的ダメージを与える「大量虐殺兵器」としての側面も存在する。

市民のゴール

小生からしてみれば、仮想通貨を買うのは自由。その暴力的なまでの市場変動による損益もその人の責任。さらにいえば、それをウォレットという名の下で未だ法整備がされていないにも関わらず、自己の資産(議論はあるが、一応兌換性はある)を他人に預けることもその人の自由であり責任だ(この意味ではペーパーやハード・ウォレットで秘密鍵を忘れる、回復できずに失う、さらにはウェブレット自体を回復できない、サービスが停止する、また今回の様に外部からの要因で喪失するのも含まれる)。

誰がどうやって誰から資産を流出させたのかという被害者意識は、もちろん行政を動かすだろう。しかし、そもそも、それに手を出したのは何が背景であったのか、自分の金銭的な欲の結果、見落としたリスクが顕在化した側面を否定しきれまい。

過去においても、アフィリエイターなどに扇動されてきた外為証拠金取引(これは断じて外国為替ではない。)は、行政によりレバレッジが抑制され、暴力的なまでの損益変動も収まった(結果、FX業界としての収益率は下落した。)。20年以上前は、パチンコなどで物理的な場所を求めたであろう層は、スマホやパッドでアクセスできるFXから、さらに激しい変動を求めて仮想通貨へとシフトしていった。既にFXに関しては、業界大手のDMMやGMOでは50万人越えの顧客口座(休眠も含む)を有する事業者が存在する。

仮想通貨に関していえば、歴史は比較的浅いながらも、高い変動率というまさに「射幸心を煽る」に極めて効果的な素材であるので、顧客獲得にために、数多くの予算が分配された。

まず、本来、市民のゴールは、個人ごとには異なるであろうが幸福の追求と実現であるはずだ。

経済的損失資産に関して事業者を罰することで溜飲も下がるだろうが、それ自体では何も回復しない。むしろ、余計な行政コスト(規制を一つ作るのにも莫大な予算が必要)が費やされ、結果、もしかしたらその失敗から得られたであろう将来の新たな成長機会も握りつぶしてしまう可能性が極めて高い。

小生は、どの仮想通貨が上がるか、どの仮想通貨が生き残るかに関して全く意見を有さないが、ブロックチェーン技術に関してだけは、将来性があると信じている。ここにおいて自己責任を全うできず、射幸心を煽られ、経済的損失を被った結果、感情的に扇動を行うことが生産的であるとは思えない。

それよりも、今後、自分の大切な財産的自由権を、誰に、どうやって託しているのかということを明確に認識することで、わざわざ新しい規制に依拠せずとも、自分の資産を自由にできるような環境を自らの手で維持するべきではないかと思う。

必要なのは自分の取引の相手方を見極めることだけだ。


鬼澤礼志
鬼澤礼志


明治大学卒業後、英National Westminster銀行(現RBS)にて当時最先端の金融工学に基づくトレーディングにてメッセンジャーとしてキャリアを始める。以降Swiss Bank Corporation, UBS, Deutsche Bank, Credit SuisseにてLondon, Singaporeなどでの勤務を経験。その間、日本に外国為替の電子商取引を導入し、当時のFX(外為証拠金)業界へのマーケットメイクを行う。これにより金融における電子化並びに効率化が高まった。引退後は豪州での資産管理会社などを通じ、ブロックチェーン関連業界に金融技術を導入している。

鬼澤礼志の記事一覧