財政保守派!日本版・「ランド・ポール」を求む!


Photo: Alex Wong/Getty Images

2月9日、米国政府が2年分の予算と3月23日までの繋ぎ予算について署名をしました。そのため、再度の政府閉鎖は実質的に影響がないまま終了することになりました。

今回の予算については、ランド・ポール上院議員が1時間にわたる早急な採決を見送る議会演説を実施したため、今年2度目の政府閉鎖という状況となりました。

同予算は2年で約3000億ドル(33兆円)の歳出増加を認めた大幅な政府支出の増加を伴う内容となっており、これは直近10年間でオバマ時代に行われた歳出増加に続く2番目に大きな歳出増加になります。共和党指導部は民主党指導部と上記の内容で合意し、歳出法案の採決を実施、それに反発した共和党内の財政保守派であるフリーダムコーカスら一部の議員が否決票を投じることになりました。

このような状況になる背景には、米国には日本と異なり党議拘束が存在しないことから、議員が自らの意思で予算や法案への賛否を投じることができることが挙げられます。むしろ、各議員、特に今回の財政保守派の議員は自らの有権者と歳出増加に反対することを約束して当選しており、共和党指導部よりも有権者との約束を優先させる民主主義としては当然のことが行われたと言えます。

また、米国では政党の候補者選定が選挙区の党員らによる予備選挙で決定されることも大きく、日本のように政党指導部が候補者を各選挙区に実質的に押し付ける形とは、同じ小選挙区であっても民主主義の成熟度合が違うとも言えるでしょう。

上記のように財政規律を求めて筋を通す国会議員は日本には皆無です。昨年に実施された総選挙は消費増税の利用使途の変更に関するものでしたが、与党内からはほぼ何の反対もなく粛々と税金の流用を正当化する行為が決定されました。首相が解散権を濫用し、実質的な敵失状態で総選挙を実施し、その選挙の結果を持って国民のお墨付きを得たとする主張には甚だ疑問が残ります。

それ以前に、財政規律を守るために「増税することしか頭にない」=「政府支出を削減するという選択肢がない」日本という国は異常です。財政規律のために増税する、という耳タコの主張が繰り返される中で、たとえ増税したところで政府の蛇口は元栓が壊れているため、政府の歳出が増加するだけのことでしかありません。財政規律を保つためには、政府の歳出を抑制し、ムダ金の支払いを止めることが必要不可欠です。

日本で毎年のように繰り返される財政赤字の支出は財政法上禁止されている行為です。そのため、これらは公債特例法を可決して違法状態を回避する運用している状態となっています。1965年に始めて可決されたときから、一時期を除いて2011年度までは毎年の可決作業が行われてきました。2011年度及び2012年度は与野党の捻じれ国会の影響で例年よりも可決が遅れたこともあり、2012年度法案には3年間の上限額を設定した複数年度の財政赤字を許容する内容が盛り込まれました。現在は同内容が延長する運用されており、2020年度までの財政赤字の発行が認められた状況となっています。

筆者は、このような緩み切った財政運営の状況を見直し、特例公債法の制定を毎年必要とする状況に戻すべきと考えます。無駄な財政の支出、消費増税の流用、プライマリーバランス黒字化の事実上の放棄などは、特例公債法の運営が厳格になされないことが原因だからです。そして、財政規律は増税ではなく、あくまでも政府支出のカットによって実現していくべきです。増税は政権与党の無能の証です。

米国では、ランド・ポール上院議員やフリーダムコーカスら財政保守派の議員が活躍していますが、日本では筋の通った財政保守派の国会議員はほとんどいません。かつての首相のように「政府を白アリと呼んで増税批判ししながら、自分が首相になった途端に増税を容認する」、自らが白アリ化している議員ばかりです。

有権者への言葉をないがしろにする国会議員は辞職することは当然です。そして、今後、日本の有権者が財政赤字が将来世代への虐待であり、その発行を認めることはそれに加担する行為であることを認識し、日本にも政府の肥大化と戦う国会議員が生まれることに期待します。


渡瀬 裕哉
渡瀬 裕哉

パシフィック・アライアンス総研所長
早稲田大学大学院公共経営研究科修了。トランプ大統領当選を世論調査・現地調査などを通じて的中させ、日系・外資系ファンド30社以上にトランプ政権の動向に関するポリティカルアナリシスを提供する国際情勢アナリストとして活躍。ワシントンD.Cで実施される完全非公開・招待制の全米共和党保守派のミーティングである水曜会出席者であり、テキサス州ダラスで行われた数万人規模の保守派集会FREEPACへの日本人唯一の来賓者。著書『トランプの黒幕 共和党保守派の正体』(祥伝社)は、Amazonカテゴリー「アメリカ」1位を獲得。主なメディア出演実績・テレビ朝日「ワイド!スクランブル」、雑誌「プレジデント」「ダイヤモンド」など。

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